WBC回顧
今年3月のワールドベースボールクラシックの決勝戦、最後は理想的な形で王ジャパンが完勝できたものの、キューバチームはほんとうに手ごわかった。
まずその打線。
1巡めにてこずった投手相手でも2巡めには必ず対応してくるという不気味さがあった。あの野村監督が、シダックスでキューバチームと戦ったときに下手投げで勝てたから王ジャパンも渡辺俊介先発でいくべきだ、などとねぼけたことをぬかしておったが、その超下手投げの渡辺俊介に対しても2巡めには、浮き上がってくる球筋に対して非常にうまく上からたたいて対応し、攻略してきたのだった。
そもそもシダックスの投手は、今となっては国際試合では違反投球となる極端な二段モーションだったから勝てただけのことで、キューバ打線の怖さを読めてなかった野村監督はもう焼きがまわったというしかない。
そしてその打線とともにもう一点、キューバチームのとてつもない脅威を私は忘れられない。そう、それは...調子がいまいちかと判断したら早めに交代させ、次から次へと松尾伴内を繰り出してくる投手起用法だ。あれは本当にこわかった。
1回の王ジャパンの攻撃時にしても、たかだかヒットエンドランがかかっていたために苦し紛れにサードゴロにのがれたのがうまく内野安打になっただけの満塁のピンチ、ここでキューバベンチは先発の松尾伴内(↓写真)をひっこめて即座に2番手の松尾伴内を投入してきたのだ。この松尾伴内が押し出しなどで不調とみるや、またまた次の松尾伴内、今江にタイムリーを打たれると今度はなんと左のサイドスローの松尾伴内を投入してきたのだ。ここに至って、王ジャパン打線はついにおさえこまれてしまい、中盤、苦しい戦いを強いられることになったわけだ。
キューバという国ではサイドスローやアンダースロー投手がいないとか、慣れていないなどということはまったくないこともここで証明された。この左のサイドスローの松尾伴内は見事に中盤のジャパン打線を封じ込め、キューバ打線もついには1点差まで王ジャパンを追い詰めたのだ。
その後なんとか王ジャパン打線が打ち崩した左の松尾伴内をひっこめると、また次の松尾伴内、そしてまたもうひとりの松尾伴内を繰り出して、最後まで勝負への執念を見せ付けたのであった。
決勝のキューバ戦、カリブの執念を象徴するあの幾多のぶつぶつ顔が今でも私のトラウマになっている。